羅漢襖絵


 ええだないか 百拙百味

百の拙(つたな)いものにも百通りの味わいがある。それでいいじゃないか。

 

 玄忠寺庫裏には阿羅漢(省略して羅漢)を描いたユニークな襖絵があります。昭和58年、今は亡き鳥取県倉吉市の墨彩画家、高木啓太郎先生によって描かれました。羅漢が襖の上に浮かんで見えたとのこと、44面の襖絵を僅か1日半で描かれました。

 

 左の写真はその中の一枚。人はみな拙い(不完全な)部分を持っている。だから味わいがあるんだ。今の私でいいんだと悟った姿です

 

 阿羅漢というのは「最高位に達した僧侶」のことですが、襖絵の羅漢は煩悩に振り回される人間の姿や悟りを得た心境が描かれています。

 

髙木啓太郎

  

 写真は羅漢襖絵の作者、高木啓太郎(号は百拙)氏です。大正5年鳥取県倉吉市に生まれ、若いころ戦時中にシベリア抑留も経験されています。日本に帰ってからは、写真店を営みながら写真家として活動を続けました。郷土の町並みや民俗行事、石仏の撮影等をライフワークとし、書画や陶芸など多岐にわたる作品を創作されました。また、生活に根差した芸術である民藝活動にも尽力され、棟方志功、河井寛次郎など著名人とも親交があります。

 

 玄忠寺は、啓太郎氏の親戚が当寺の檀信徒であった事からご縁を頂きました。寺の庫裏には羅漢襖絵を始め多くの作品を展示しています。平成9年に81歳でこの世を去られました。